今日のコーチ

第3回

2009.01.14 | 23:52

柴田 賀章 さん
コニカミノルタ エムジー株式会社
生産センター
メールマガジン
「100万人のビジネス・コーチング」
第6号掲載

今日のコーチは、コニカミノルタ エムジー株式会社 生産センターにてご活躍中の、柴田賀章(しばたよしあき)さんです。
私(城田)はPHPのビジネスコーチ養成講座の修了生で、柴田さんも同じ講座の修了生です。彼とはコーチングの勉強会で知り合いました。
勉強会ではファシリテーション(会議の進行役)をされていらっしゃることが多く、参加者の方を自由に語らせ、そしてその発言の受け止め方はお見事です。
柴田さんの見た感じは穏やかで、コミュニケーションは冷静かつ好意的です。ていねいで落ち着いた印象があるのですが、心の中はとても熱く、頼もしい強さを持っている・・・彼を描写するとこんな感じです。
今回彼にインタビューをして、上述の印象はますます強くなりました。ひとことで言うと、「静かなリーダーシップ」を彼から感じます。
リーダーシップと言うと、人をぐんぐん引っ張っていく、というイメージがありますが、柴田さんのリーダーシップは、まさに「信じて見守る」リーダーシップです。実はこの、人を「信じて見守る」ことは、非常に勇気がいることなのです。
さて、このインタビューの中から、みなさんはどんな勇気を感じるでしょうか。
今回もたっぷりあります。読むのに少しお時間が必要かもしれません。お茶で飲みながらリラックスして、ゆっくりとお楽しみ下さい。

柴田さんの一言

いかに相手と対等でいられるか、が重要です

聞き手: 城田(fRee sTyle)

(以下会話中、敬称を省略します)

城田
一番最初の質問は・・・柴田さんが、今、どんな風にコーチングを実践しているのか、っていうことなんですけど。
柴田
えーとですね、コーチングのセッション、という枠組みで言うと、不定期ではあるんですけど、基本的に会社の中の同僚であったり、あとは後輩であったり、まあそういう人たちに対して、ミーティングのような形で、ちょっと時間をもらって、「ちょっと聞かせてくれる?」とか、あるいは「ちょっと聞いて下さい」っていう形で、今、やっています。
城田
そうですか。
やっていてどうですか?
柴田
そうですね、自分がコーチングを始めたばっかりのときと比べると、今はそれなりに機能しているかな、とは感じますけどね。
ただ、なかなか具体的にこう、すぐ成果が出るような形にはなってないんですけど、かなり本人の意識とか、本人自身の中にも変化が表れているようなことは見受けられるし、本人からのコミットメントもだいぶ、変わってきたりとか・・・そういう変化を感じながらやっています。
城田
社外の人にもコーチングをしますか?
柴田
社外はですね、基本的にないですね。
城田
では、セッションという形でなくても、社外の人に対して、コーチング・スキルを役立てたり、活用している、そんな場はあります?
柴田
スキルは、本当にいろいろなところで、使うように意識しながらやっていますね。
城田
例えば?
柴田
僕、今仕事がら、いろんな職場を、巡回というか、顔を出す機会が多いんですよ。そういうときには、そこの職場の上司の方、係長さんとか課長さんとか、そういう方たちがいる会議にも参加したりするんですけど、そういうときには明らかに傾聴のスキルを使ったり、バックトラックをしてみたり・・・
あと、会議の進行役みたいなこともするんですが、そのときにはみんなの意見を求めたり、それを要約して伝え返したり・・・
そういうことではとても役に立っていますね。
城田
そう言えば、コーチングの勉強会でも、ファシリテーションをよくされていますが、とても慣れていらっしゃる感じですよね。
柴田
お恥ずかしいです(笑)。
ついついやってしまうんですよね。
城田
現場での経験があるからなんですね。
柴田
そういうところで役立てていますね。
あと、会議の他には、ほんの数分間くらいですけど、セッションという時間を設けなくても、「ちょっと聞かせて」とか「最近、どう?」という会話の中で、「あ~、今こういうことが起きているんだ」とか、「実際にやっていてどう?」とかね。本当に短い時間でも、スキルを十分活用することはやれていますね。
城田
へえぇ。じゃあ毎日?
柴田
そうですね。ほぼ毎日スキルを使ってますね。
あとは、子供相手にとか。。。
城田
柴田さんのお子さん?
柴田
はい。娘がふたりいるんですよ。
城田
で、どんなふうに?
柴田
「今日、学校でどんなことがあったの?」とか、「給食、何食べた?」とかね。
城田
へえぇ。。
柴田
それで、「おうちとどんなふうに味がちがった?」とかより具体的に娘に聞いたりしてね。
夕飯を一緒にとる時間を使って学校での授業の様子や、行事について訊いて「そんなことがあったんだね」って返して、それについて感想を聞いてみたり・・・
そんなふうにスキルを使っていますね。
城田
お子さんの反応はどう?
柴田
ええとね、上の子は意外と答えてくれるんですけど、かえって下の子が・・・
小学校2年生なんですが、「難しい質問するね」とか(笑)
城田
可愛いね(大笑)
柴田
「またそういう風に訊くのぉ?」とか、結構下の方が冷めてたりして(笑)。
上の子は「うぅん・・・」とか言って考えながら、答えてはくれるんですけど、下のはおねえちゃんとの会話を聞いているから、たまにそんな突っ込みが入りながら(笑)
城田
いいですね。お子さんに対してそういう会話をするって。
実際に子育てにコーチングを活用している人って結構いますものね。
柴田
そうですね。
城田
柴田さんがコーチングスキルを日々職場や家庭で活用している様子が本当によくわかりました。
柴田さんがそんなコーチングを学び始める前と後ではどんな変化がありました?
柴田
いくつかあるんですけど・・・まず、話を最後まで聴くようになりました。
昔は自分の経験とか体験が邪魔をして、自分で勝手に解釈をして、話を最後まで聴かないで終わらせてしまうとか、そういうことって正直あったんです。
でもコーチングを習って、いろいろ試していく中で、自分の話を最後まで聴いてもらえると、すごくいいなって思ったし、それをやっぱり
相手にやってみると、相手もすごく、こう・・完了感というか、「最後まで聴いてもらった」っていう・・・そうすると明らかに相手の表情も違うんですね。すると次にまた話してくれるんです。
城田
よい循環が生まれるんですね。
柴田
ええ。それがまず明らかですね。
あとは・・・やはりね、基本的に、今でもたまにあるんですが・・・たまに、へこむこととか、ネガティブにとらえたりこととか、何かうまくいかなかった気がすると、結構傷つくタイプだったんですが、コーチングの中で「完了」ってあるじゃないですか。
城田
ええ。
柴田
あの「完了」っていうことを学んで、ひきずらなくなった。
城田
それはよかったですね。
柴田
ですので、今、意識して毎日やるようにしているんですけど、僕、寝る前に「完了」するんですよ。
城田
へぇぇ・・・。
柴田
布団の中で。
城田
布団に入って、頭の中で?
柴田
そう。
今日一日、うまくいったこと、いかなかったこと、ということを振り返って完了して、寝るようにしているんです。
城田
それはいい習慣ですね。
柴田
はい。
それをするようになってからは、寝不足とかはまた別ですけれど、気分的にすっきりするし、逆にそれをしないで寝ると、「あ、昨日完了しないで寝ちゃった」って・・・
城田
未完了?(笑)
柴田
そう、未完了(笑)。
だからどんなに遅くても、睡魔と闘いながらも、「完了」ということを意識してやっています。
城田
一種のセルフ・コーチングみたいなものですね。
いいですね。私もやろうかなぁ。
柴田
あとは・・・
あともうひとつはね、読書。本を読む量が明らかに増えました。
城田
え? どうして?
なんでコーチングを学んだら読書量が増えたの?
柴田
ああ・・・そうですよね。
僕、正直、本という本を読む習慣が、まったく、なかったんです。
城田
コーチングを学ぶ前は?
柴田
ええ、学ぶ前は活字を読むって言っても新聞程度で。あとはもう情報って、僕、すべてテレビからだったんです。
でもコーチングを学ぶようになってから、コーチングの本をはじから読みあさって、そういうところから情報を得るようになって。
この間本棚整理したら、かなりの数ありましたね。
城田
それはコーチングの本?
柴田
コーチングにまつわる本です。
城田
へえ。。。
柴田
まあ、みんな同じようなことが書いてあるんですけど、「この人はどういうふうに捉えているのかな」とか、いろんな視点からコーチングを見たときに、「どういうふうに捉えているのかな」とか・・・
たとえば社内で研修の講師をさせてもらっているときに、やっぱりアウトプットに使いたいので。
城田
なるほど・・・
柴田
まあ、結果的にコーチングがらみの本ばかりなんですけど、そう言う意味で読書量が増えましたね。
城田
ふうん。。。
今まで情報をテレビに頼っていたのに、それが、コーチングだと、どうして本になったんだろう?
柴田
なんでですかねぇ。。。
城田
ねえ。よく読む気になりましたよね。
柴田
そうなんですよ。それが僕の中で不思議なんですよ。
でも一冊読むと「他はどうなんだろう?」ってどんどんそこに入っていって、自分でもすごく驚いているんですけど。気がつくと本屋に行って、ビジネス書のコーナーで、コーチングの本に手がかかっている自分がいるんですよ。
城田
大体何冊くらいになったんですか?
柴田
この間、ざっと数えて・・・まだ何冊か読んでいない本もあるんですけど、30冊くらいあります。
城田
え~っ?
コーチングだけでそんなに?
柴田
びっくりでしょう(笑)。
「コーチングだけでこんなに買ってたよ」って。
今も一冊持ち歩いているんですけどね。なんかもう常にそばにある、おまもりみたいな感じですね。
城田
もうコーチングの鬼って感じですね(笑)
柴田
ないと、落ち着かない。軽い禁断症状じゃないんですけど(笑)
城田
すごい密着しているんですねぇ。
柴田
そうですね。もう本当になくてはならない、といいますか。完全にもう僕のリソースですね。
城田
そうですよね。しかもコアのリソースですね。
これも大きな変化ですね。
前はテレビばっかりだったのに、今はひとつのテーマで30冊も読むなんてね。
柴田
ええ、本当に。
城田
あとは・・・何か変わったことってありますか?
柴田
そうですね・・・仲間が増えました。
城田
それは私も思うなぁ。
柴田
このコーチングというひとつの枠組みの中で、ここまで仲間って集まるものなのかなって、出会えるものなのかなって、すごい感じますね。
城田
ね、何ででしょうね。
他のことだったら、趣味とかね、ここまで広がらないと思うのよね、実際に。
柴田
そうですよね。
それはね、でも、やった人しかわからない。感じた人しかわからないんですけど。。。
コーチングをもし自分が学ばなかったら、こうして城田さんともまったく出会わなかったわけだし、そういうことを考えると、運命的ではないですけれど、形としてはいろんな会社の人といろんな方たちと出会えるきっかけになった。それはすごく大きいですね。
城田
コーチングを学ぶ仲間たちの、名刺を数えても優に100枚ありますよね。
柴田
すごいですよね。仕事のつながりじゃないじゃないですか。
それであの方の知り合いがこの方で、そのまた知り合いの方が・・・って、こうつながっちゃうじゃないですか。
城田
うん。つながる。
柴田
で、実はお互いに共通に知っている人がいてとか。
だから、仲間が増えた。
城田
これもコーチングを始める前と後での、大きな変化ですよね。
他には思いつく変化ってまだありますか?
柴田
そうですね。。。
さっき相手の話を最後まで聴くって言いましたが、これに関連すると思うんですが、相手の存在から何から何まで認める、ということができるようになりました。
どうしても組織にいると、上下関係ってありますよね。もともと部活とかをやっていたので、体育会系は上下関係っていう意識で。そして会社に入っても上司と部下、先輩と部下、だったんですが、コーチングって年齢とか職業とかなくて、対等な位置についてくれるじゃないですか。
城田
うん。対等ですね。
柴田
でも、コーチングでは、人生の先輩の方たちとお会いしても、本当に僕の話を一生懸命聴いてくれたりね。そういうところでの気づきがあって、だから自分も先輩とかいうことではなくて、同じ目線で対等に・・・という、そういうことはすごく感じるようになりました。
そういう変化は・・・前は本当に、先輩として「あれやれ」「これやれ」って言ってた部分が仕事の中ではあったんですが、それがだんだん溶けてきて、「話すときは対等で」になってきました。そういうことも大きいですね。
城田
コーチングにおける「パートナーシップ」を仕事の中で実践して、それが身についたんですね。
柴田
そうですね。
そういう意味では仕事の面でも変化がありましたね。
城田
周りの人は、柴田さんの変化に気がついたりしたんでしょうか?
柴田
あぁ・・・人はよく、歳をとると丸くなるといいますが、内面的なものとか、外見的に丸くなるとか(笑)。
昔、ある人になんですけれど、僕は以前、とがっていたイメージがあったらしいんですよ。そんなつもりはなかったんですけど、やっぱり、他の人と比べると、少しとがっているというか、近寄り難いイメージがあったらしくて、なんかオーラがあったのか、バリアがあったのか、わからないんですけれど、そういうところがあったような。まあ、これは後から言われたんですけどね。
「最近柴田さんって丸くなったよね」とか、「話しやすくなった」って言われたとき、ちょうどコーチングを学び始めて、目線がだんだん対等になってきたときで、それを意識してやるようになったときに、なんかぽろっと言われたんですよ、ある人に。
城田
へえ。
柴田さんのことをよく見ていたんですね。
柴田
自分の中では、少し意識はしていたけれど、そんなに変わったつもりはなかったんです。でも、その人にはすごい変化だったみたいですね。口に出して言うくらいだから。。。
だからそのときに、意識してやっていることが、その方には伝わったのかなって思いました。
城田
出たんですねぇ。。。
柴田
出てたんでしょうね(笑)
城田
こうして聴いてみると、コーチングは柴田さんに、多くのよいものをもたらしたんですね。
そんなコーチングを実際に使ってみて、機能したな、と感じた瞬間って、最近ではどんなときでしたか?
柴田
最近ですと・・・仕事でひとつ。
プライベートでひとつ。
城田
教えて!
柴田
え・・・と、仕事の場合は、セッションではなくて、スキルを使ったときなんですけど。
今ですね・・・ちょっと長くなっちゃうんですけど・・・
城田
全然構いません!
柴田
今、コニカミノルタグループ全体で、ですね、”Simply BOLD”っていうのがあって・・・
城田
ああ、柴田さんからのメールのフッターに書いてあった・・・
「そこに勇気はあるか?」でしたっけ?
柴田
そうです!
ありがとうございます。気づいて頂いて。
城田
はい。
柴田
あれがですね、全社あげてのスローガンなんです。
城田
へえ、そうなの。
柴田
で、タウンミーティングと呼んでいる職場単位でのミーティングがあるんですが、それを各職場で開いて、”Simply BOLD”と言うことに対して、自分たちの強みだったり弱みだったりを、まあSWOT分析に近いんですが、それらを挙げさせて自分たちを振り返らせて、自分たちは具体的に、じゃあどうしたらいいのか、っていう目標を立てて、スローガンを“Simply BOLD”宣言として創るために、各職場でタウンミーティングをしましょう、という話になって、今全社で取り組んでいるんです。
そういう中で、ひとつのコンセプトにみんなで向かって、ベクトル合わせましょうっていうこともあったんでしょうが。職場ごとの“Simply BOLD”宣言、まあスローガンですよね。
で、自分たちの職場は「お客様に活きたサービスが提供できる明るい職場をめざします」という宣言をしたんです。
じゃあ「具体的にどんなことをしますか?」って言う部分、ここからGROWモデルになるんですけれど、そういうことを書き出して今後定期的に振り返りをしながら、できた、できない、という話になるんですが、まずそこも、宣言をして、具体的にどんなことをしますかっていうところまでも、タウンミーティングをする場を設けることになったんです。
その中で、直属の上司である部長が「柴田君、リーダーをやってくれないか」と。まあ、はじめは「どうして僕が?」って思って。僕今の職場にうつって一年ちょっとなんですけど、でも、やってもらいたいっていうことなんで。
まあ、せっかく言われたので・・・もちろん部長にもそのとき肯定的な意図があったと思い、「じゃあ、やります」という形でやらせて頂いたんです。
で、その中で、リーダーとして、進行役も含めて、みなさんの思っていることを引き出さなくてはいけない。
そういうときにですね、みなさん積極的に参加して頂いていたんですが、そこでしっかり、ミーティングですから、意見を求めて、言ったことに対して、バックトラックをかけていく。で、いくつか出ると「つまりこういうことですか?」と要約をかけて、そこでスキルが機能したというか、自分でも「こういう感じでいいのかな」って思って、終わった後、部長に「こんな感じでいいですか」って聞いたら「よかったと思う」と言ってもらって。
またそれでモチベーションもあがって、それを3回やって、最終的にみんなで決めた宣言が出たんです。
それが、一応僕の役割としては、そこで担うことができたので、セッションではないですけど、スキルが機能したな、っていうのがあります。
城田
柴田さんは、そのタウンミーティングという枠組みの中で、コーチング・スキルを使って、それを継続して、最後は成果につなげたんですね。
柴田
そうですね。まずは一歩という部分で。
城田
へえぇ。いいですね。
すごく具体的な成果ですね。
柴田
ええ。
つい最近あったばかりのことです。
城田
嬉しかった?
柴田
そうですね。
まあ、やるからには、っていうのがあったので、やらせてもらったんですけど・・・もしかすると部長はそれを期待していたのかもしれないですね。部長は僕がコーチング・スキルを持っていることを知っているので。。。
もしかすると、言葉にはしてないですけど、そう言った部分で期待をして頂いていて、僕がそこで形とすることができた、というのは、もちろんみなさんの協力あってのことですけど、それはすごくやってよかったな、って思いました。
城田
そうですよね。
本当に機能したっていう感じですよね。
柴田
ありがとうございます。
城田
さて、もう一つの方は?
柴田
プライベートの方は、ですね、これは家庭なんですけど、実はですね、上の子供が、今年小学校6年生で、最後の運動会が9月の終りにあったんですよ。
で、正直あまり走るのが得意ではないんです。
だったんですけど、せっかくだから、最後の運動会だし、なんとかひとつでも上の順位にならないかな、させてあげたいなっていう親心(笑)、それがあって、ですね、で、いつも6人で走るんですけど、まあ5位とか6位とか、そのへんだったんですよ。でもまあ一生懸命走っているし、そこに対しては承認をかけていったんですけど、最後くらい、ひとつでも上の順位になったらいいなって思っていて。
何度か学校で練習している話を聞いたりとかすると、そこで若干親の願望・・・ゴールを、押しつけたんですけど。敢えてストレッチで、「一位になる、としたらどんなことができるか?」という、一位になるというゴール設定をして、セッションをしてみたんです。
それでいろんなことを引き出すことが出来て、まあ結果から言うと、実は一番になったんです。
城田
えーっ!すごいね~。
ねえ、どうやって、どうやって!
それちょっと他の人も聞きたいと思う(笑)。
柴田
もちろん本人の頑張りもあるんですけど、練習をしていく中で「今日、どういうふうに走ってみた?」って。
城田
あ~・・・
それ、ほんと、コーチングだね。
柴田
「タイム測って今日は何秒だった?」って。
「一回目と2回目とどれくらい違う?」って訊いて「コンマだけどこれだけ縮まったよね」ってそういうところで承認をかけて・・・
そんな中で「ひとつでも順位をあげるためにどんなことができる?」って本人の思っていることをいろいろ聴いて、あとは「クラスで一番速い子ってどんな子?」っていう話をして・・・
城田
モデリングですかぁ?!
柴田
「自分と何が違う?」って訊いて・・・
城田
あぁ、いい質問ですねぇ。。。
柴田
で、まあ例えば「腕を大きく振ってる」とか。
よく見てるんですよね。
城田
子供のほうがよく見てるかもね。
柴田
で、どうかな~と思いながらも質問してみたんですけど・・・
「○○ちゃんは、腕を大きく振ってる」とか「背筋がのびている」とか言うんですよ。
で「自分とどんなところが違う?」って訊いて、「もしそれを自分がやったらどんな風になるかな」って。そういうことを訊いていくうちに「次の練習でやってみる」って言うんです。そして次に日に結果を聞くんです。
城田
へえぇ。
ていねいですね。
柴田
で、運動会にむけて、準備期間1か月くらいしかなかったので、スケジュール的には厳しかったんですけど、本人も毎日少しずつタイムが縮まっていくことに、気がついたんだと思いますよ。
城田
それってこまめに柴田さんが訊いたからでしょう?
柴田
ええ。
で、そこで承認をかけて、一緒に喜んで・・・。
それで本番、当日を迎えて、「今までやってみたことをやってみようか」と。
城田
うん、うん。
柴田
で、結局、僕カメラ越しでしか見てなくて(笑)。
僕はちょうど最後の直線に入るところにいたので、カメラで追っかけてて、背中しか見えなかったんですけど、(カメラで)追っかけてったら、周りに人がいないわけですよ。一番ですから。
城田
わあぁ・・・
柴田
すごい、ちょっと興奮しましたね
城田
泣いたでしょ、ほんとは。
柴田
あの・・・まあ、泣いてはいないんですけど、もう泣きたいくらい嬉しかったのは事実ですね。
城田
うん、もう聞いててすごい感動したもの。
柴田
「これ、一番だ!」って一生懸命走っていて、で、本人が一番びっくりしていて、すごい興奮しているんですよ。
で、こっちにむかってずっと、こう指を立てて、「一番、一番」ってずっとこっちに向かってやっているんですよ。
城田
可愛いぃ。
それは嬉しいねぇ。。。
柴田
それで席に戻ったら泣いちゃって。
城田
お嬢さん、泣いちゃったんだ。
柴田
自分が一番になったことが信じられなかったことと、「本当に自分が一番でいいの?」っていうことで、担任の先生に慰められながら周りの友達もみんな「おめでとう」「おめでとう」って言ってくれていて、だから本人にとっては最後の運動会で、すごくいい思い出ができたんです。
城田
ほんと、すごいなぁ。。。
柴田
はい、そんなことがありました。
城田
すごい成果ですね。
柴田
いや、最終的には本人の頑張りだと思いますけど、でも、少しでも何か気づきをね、与えられたかな・・・と。
城田
その、支援をしたわけでしょう?
う~ん、いい話ですね。
柴田
やっぱりね、親子っていう関係があるから、いかに親の考えを手放せるかっていうことは、すごく自分の中でジレンマがありましたね。
どうしても親だから「ああしろ、こうしろ」ってついつい答えを与えてしまうじゃないですか。たとえば「友達が腕振ってる」って言ったら、「じゃあ、腕振ればいいじゃないか」って、今までだったら言ってたと思うんですよね。
城田
うん、言いそうになっちゃうものね。
柴田
ええ。でもそれを敢えて、本人にモデリングをさせながら、「じゃあ、ちょっとやってみようか」なんてフューチャー・ペーシング的にですね、「どんな風に振っていたか、ちょっと見せて」って。
それが少しでも力になって結果になったのかなってちょっと思います。
城田
今、ふたつすごくいい話を聞いたんだけど、そんな成果を出したコーチングの中で、何か意識してやったことってありますか?
柴田
そうですね。。。
仕事の方だと、グループの中で何かひとつのことについて、みんなで話し合うミーティングって、持ったことなかったんですよ、今まで。
だからすごくいいきっかけになったと思いますし、その中で、みんなで仕事以外の話って、みんなでわいわいがやがや、話すってことがなかったんですけど、そういう中で、その人の話を聴くっていう部分ですよね。いかに引き出せるかっていうところをすごく意識して・・・「どうやったらこの人から意見を引き出せるのかな」ってそういうことは意識してやった・・・つもりです。
城田
具体的にはどういうふうにしたら、その人から引き出すことができました?
柴田
そうですね・・・
じっくり考えて話す人と、思いついたらすぐに話す人と、いますよね。
城田
ええ。いますね。
柴田
で、どんどん意見を出してくれる人には、意識的にアイコンタクトをとってみたり、じっくり考える人には、「今、これこれこういう意見が出ましたけど、他はいかがですか?」っていう促しをしてみたり。
そうするとそういうことを聞きながら、その人はじっくり考えるのでそれを待つとか。。。
城田
なるほど。
その人にペーシングをして、その人にふさわしい引き出し方をしているんですね。
柴田
ええ。
グループ全体にペーシングをする、というよりは、ひとりひとりに、ペーシングをする、という感じ。参加して下さっているみなさんに、それぞれペーシングをするような・・・
城田
なるほど。。。
じゃあ、さっきのお嬢さんの話、あのときはどんなことを意識してやりました?
柴田
そうですね。。。
「答えは相手の中にある」っていうことを思っていました。「だから、絶対に自分の方から答えは出さないように」と思ってやったと思います。
もし本人が「もう、いい」って言ったら、それで終わっちゃうかもしれないんですけど、訊いて、待つと、いろいろ出てきたので・・・。
城田
信じて待って、取り組んだんですね。
さて、これまでスキルを中心に話をしてきましたが、今度は、もう少しマインド的なもの、姿勢とかもいれて、そういったもので柴田さんがコーチにとって、すごく重要だと、思っているものは何ですか?
柴田
そうですね。。。
コーチングは基本、サポートする、支援することですから、とは言っても・・・う~ん、なんだろう・・・
え・・・と・・・距離は難しいかもしれないんですけど、味方であるとか、対等だよ、という部分を意識しながらいかに寄り添えるか、ってことですよね。今の僕にはそこが重要かなって思います。
城田
寄り添う・・・ね。
柴田
まあ、くっつき過ぎず、離れ過ぎず、その距離というのは個々に違うと思うので、そこは柔軟に変えていかなきゃいけないと思うんですけど。そういう中で、相手の「見方だよ」「対等だよ」というところを、意識しながら支援する・・・そこが今の僕には重要かな。
特に会社の中にいると上司、部下ってなると基本的に上下関係ってできちゃうじゃないですか。
城田
そうですね。
柴田
その中で上司がコーチとして、役割を担うのであれば、いかに相手と対等でいられるか、ということがすごく重要だと思うんです。
城田
それって難しくない?
柴田
ええ、難しいですよ。
城田
実際に階層のある環境の中で、対等性を持つって、すごく難しいなって今思ったんだけど。
柴田
そうですね。
僕、今の職場は、部下がいないんですよ。だから他の部署に行ったりしたときに、先輩後輩ってなったときに、対等性を意識していますね。
そこでいかに対等に話ができるか・・・それが僕にとって重要ですね。
城田
どうして重要なの?
柴田
う~ん・・・。
実際、それを、自分が上司部下の関係にあった職場にいたときに、その考え方を持ってコーチングをしたときに、機能したからですね。
城田
なるほど、実体験からそう思ったんですね。一番説得力ありますよね。
柴田
はい。
そういうことを信じて、今、重要だって思うんです。
城田
はい。よくわかりました。
柴田
ありがとうございます。
城田
柴田さんがコーチングを通じて、社会にむかってやってみたいこと、これから実現させたいことって何ですか?
柴田
まずは、自分がコーチングを学ぶことによって、いろんなよさを感じているわけですから、それを伝えていきたい、というのがまずひとつ。
それが前提にあって・・・そしてやはり自分は組織の人間ですから、会社の中で伝えていきたいです。
今、コニカミノルタエムジーの生産センターという枠組みの中ですけど、社内講師をさせてもらっている・・・それは、僕の中でも、学んできたコーチングのよさを伝えていく、ということでやらせて頂いている部分です。
まず、その輪をどんどん広げていって、よさを伝えた人がまたよさを人に伝えて、そういう輪が広がりながら、それが今、コニカミノルタエムジーの生産センターという枠組みから、コニカミノルタグループ全体に、こう・・・伝わるというか、みんながそのよさを知って、みんなが会社の中でそのマインドを持って、スキルを使ってやれば、こんないいことはないなって。
城田
うん。
ほんと、そんないいことはないですよね。
柴田
・・・ということを、僕はPHPのビジネスコーチ養成講座のベーシックを学んでいたときに、「僕の野望は、コニカミノルタグループでコーチングを浸透させることです」ってみんなの前でコミットしたんですよ。それを今でも持ち続けて、少しずつですけど、その輪を広げながらやってる。
それがこう、どんどん広がっていって、もちろん僕だけじゃなくていいんですけど、そういうよさを知ってくれた人が、ひとりでも多く増えていって、事業会社の枠を飛び越えて、グループ全体がコーチングのよさをわかって頂けたら・・・
まずそういうことをやりたい。
城田
野望なわけね(笑)
柴田
そう、野望です(笑)
城田
そしてその野望をずっと持っているのね。
柴田
それが少しずつですけど、かない始めていて、で、少しずつですけど、輪が広がっている。
まず会社としてそういうことをしてみたい。
城田
会社も変わるでしょうね。
柴田
そうですね。
城田
あとは付け加えること、何かありますか?
柴田
あとは・・・会社ではなく、地域貢献的なところで、例えば、学校とかね、子供の通っている学校とかに行って、スキルのよさっていうか、クラスメイト同士でお互い認め合いましょうとか、傾聴というか、くだけて言えば、コミュニケーションスキルを、クラスメイト同士仲よくして、よさを伝えていければな・・・と思います。
ちょっとそれはまだやっていないんですけど、できたらいいなぁって思います。今自分の中でイメージを持っていて。
城田
実例があるから、お嬢さんが徒競争で一番になっているから、説得力あるんじゃない?
変化が起こりますよって言えますものね。
柴田
そうかもしれないですね。
城田
他にはなにかありますか?
柴田
他には・・・ですね、さっき、仲間って話をしたんですけど、城田さんみたく研修講師として、活躍されている方って、たくさんいらっしゃると思うんですけど、僕みたく社内でコーチングを伝えている、社内講師の人って僕の仲間にもいるんですけど、その社内講師の仲間たちで、その、コラボレーションではないんですけど、お互いが共通としてできるカリキュラムって、作れないかなって・・・
城田
あ・・・面白いですね、それ。
柴田
まあ、これ・・・飲みながらですけれど、そう言う話をですね、城田さんもご存じの、仲川さんとですね・・・
城田
あ~、仲良しの仲川さんですね!
柴田
ええ。
二人でこう飲んでると、「我々のできることってどんなことだろう」って話をして、そういう話の中で、「社内講師をしている我々で何かできないかな」って話していて、何かこう共通のプログラム、カリキュラムが組めて、お互いが持っている同じものでやれば、例えば僕の会社でやったときに、こういうメタファーを使ったら、「こういう反応が返ってきたよ」って言うと、「だから有効的だったよ」ってリソースとして渡してあげると、また仲川さんが自分の会社でやってみたりとか。
城田
ノウハウを共有できるっていうことね。
いいアイディアですね。
柴田
今、そういう話をしながら、盛り上がっているんですよ。
共有することによって例えばですけど、僕の会社に来てもらったりとか、実は去年の1月、約1年前なんですけど、僕が社内でコーチング研修をやっているときに、来てもらったんです、オブザーバーとして。
城田
へえ・・・すごい試みですね。
柴田
そんなことを実はもう去年の一月にやっていて、見てもらって、フィードバックをもらって。
そういうことをやったりしているんで、お互いこう行き来しながら、リソースを共有しあってやるっていうのも、面白いよねって話で今盛り上がっています。
城田
すごくいいことだと思う。
今まででない試みじゃない?
是非是非やって下さい!
柴田
自分が使ったリソースを相手が使って「どう機能したのかな」とか、すごく楽しみだし、フィードバックをもらって、お互い社内研修をして、
お互いに「どうだった?」って話もよくするんですよ。
「こういうスキルを使ったよ」とか・・・まあリソースの共有はしているんですけど、実際その場にいってとか、同じカリキュラムではないので、多少ギャップもあるとは思うんですけど、そういうふうに今でもリソースの共有っていうのは、やっているんです。
それを同じカリキュラムで今度やったら、どうなるのかなって・・・そういう話があるんです。
城田
いいですね・・・楽しみですね。
では、最後の方の質問になるんですけれど、ここまでコーチングの素晴らしさについて、いろいろお話ししてきたんですが、コーチングを受けてみたいという人、結構いると思いますので、そういう人に何かメッセージを・・・
柴田
もちろんクライアントをやってみたい、と言う人には、是非お勧めしますし、やった方が絶対にいいって思うんですが・・・
実際クライアントとして、「自分は本当はこんなこと、考えていたんだ」もう箪笥の本当に奥の方から、手を伸ばして「何かな?」って引っ張り出したら、「あ、こんな服、持ってたんだ!」っていうくらいの気づきが必ずありますから。
本当に受けたいなって思っているであれば、コーチングを受けるのは本当にお勧めします。生きていく中で自分の中で「こういう自分も持っていたんだ」って言うのが。
もちろんコーチの方が効果的な質問をしてくれたり、環境を整えて引き出してくれて。。。
でもなかなか体験できることじゃないですから。
城田
そうですよね。
普通の日常ではなかなか・・・ね。
柴田
それをすることによって、自分で自分の背中を押せるような感じ。「あ、これでいいんだ!」っていう再確認ができたりすることが、必ずあるんで、是非おすすめをしますね。
城田
私も同感です。
柴田
ありがとうございます。
城田
では今度は逆に、これからコーチングを学びたい、という人に対して・・・メッセージをお願いします。
柴田
まずはその、コーチングを学ぶにあたって、よく言われるんですが「学びの旅」って。
僕も学びの旅を今続けているんですが、是非学びの旅を一緒に。。。
まあ、なかなか旅行とか旅とかは、「よさ」って、言葉や、映像とかで見ても、自分が実際その場に行ってみないと、感じ方って違うじゃないですか。だからいかによさを伝えても、伝わり方っていろいろあると思うんで。そのために是非とも一歩前に、その旅に出て頂きたいと思います。
そうすると本当にいろんな出会いがあります。いろんな気づきもあると思います。「あぁ、こういう人と出会えるんだ」とか。。。やってみないと本当にわからないと思うので、いくらよさを言ってもわからないから。
それに「勉強したい」と思った時点で、その人の旅の準備は始まっていると思います。そういう方は、みなさんもう荷造りを始めて、どれくらいの旅になるかはわからないですが、「どんなものを持っていこう」ともう準備を始めたら、後は旅に出て頂くだけだと思います。
同じ旅をして、仲間になってもらって、お互い感じたことを伝え合いながら、よさを分ちあう・・・と思うので、是非・・・思った方は、もう是非!
学びの旅に出て頂きたい。
城田
旅に出ましょう!
さて、そろそろインタビューも終わりに近づきましたが、何かあと、付け加えたいことはありますか?
柴田
あの・・・さっき、コーチングをね、学ぶ前と後でどんな変化があったかっていう話で・・・もちろんスキルを身に付けてそれを有効に使えたってことは、自分にとってすごいプラスなんですけど、とにかく、やっぱり仲間ってすごいなって、今、再認識しましたね。
コーチングの威力ってすごいなって・・・。今、そういうことをすごく感じました。
今、自分で「仲間」と言った時点で、すごいいろんな人の顔が浮かんだんですよ。あの人も、この人も。。。で、再受講に行けばまたいろんな方に出会えるし。
城田
日本全国津々浦々から人が集まってもくるしね。
柴田
もちろん(PHPビジネスコーチ養成講座の)アドバンスコースにも行ったので、よりスキルも深まりましたし、また新しい人にも出会いましたし、そういうところの中で、本当にすごいなぁって。そういったことを、思い知らされたっていうか。。。
正直、仲間ってお金で買えるもんじゃないじゃないですか。
僕がもしベーシックコースの11期でなければ、仲川さんにも、城田さんにも、出会ってなかったですよね。そういうことを考えると、すごい運命というか、縁というか・・・
今日ずっと城田さんに話を聞いてもらって、やっぱり、そこなんだなぁって思いました。仲間あっての自分だったんだなって。それを自分のリソースとして、それに仲間に相談にのってもらうこともあるだろうし、本当に仲間って大事だなって。
もう仕事の枠組みから完全に離れていますから。
こういう仲間って本当に素晴らしいなって思います。
もちろん仕事の仲間も大事ですけれど。
本当にコーチングをやってきて、よかったなって実感しました。
まだまだ旅は続きますが。
城田
また仲間がこれからも増えるでしょうね。
柴田
ええ。
城田
今日は本当にどうもありがとうございました。
柴田
ありがとうございました。