第2回
2008.11.15 | 00:02
- 斎木 茉里 さん
- 都内某財団法人勤務
PHP認定ビジネスコーチ
米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー
ビジネスコーチというと、男性のイメージがあるかもしれませんが、女性のビジネスコーチも多く活躍しています。女性のコーチで今、もっとも輝いている1人を今日はご紹介致します。
いつものように、できるだけ生の対話をそのままお伝えしたいと思っておりますので、文体は会話体、そして少しボリュームがあります。
私(城田)はPHPのビジネスコーチ養成講座の修了生で、斎木さんも同じ講座の修了生です。彼女とは3年ほど前、彼女が受講していた期のビジネスコーチ養成講座を私が再受講したときに知り合いました。以来何度も勉強会で一緒に学び、そのうちに自然と仲良くなり、今ではすっかり私の相棒的存在です。
彼女のよさは精神の自由さと旺盛な好奇心。それがコーチング・セッションの根底に流れていて、クライアントに精神的な開放感を見事に味わわせています。
また斎木さんは人一倍熱心な学習者で、様々な勉強会に頻繁に顔を出し、その実力からは想像できないほど謙虚な気持ちで常に自分の技術やあり方に磨きをかけています。今回彼女にインタビューをして、その成長が本当に伝わってきました。そして私ももっと成長したいなぁと、モチベーションも起こりました。
さて、みなさんはこのインタビューから、どんな刺激を受けるのでしょうか。読み応え十分なインタビュー記録を、どうぞお楽しみ下さい。
斎木さんの一言
人は自分のリソースを開花させる責任がある
聞き手: 城田(fRee sTyle)
(以下会話中、敬称を省略します)
- 城田
- 斎木さんが今、行っているコーチングは、いつ、どんなところ、どんな環境で、誰に対して実践しているんですか?
- 斎木
- 私の場合は、会社が終わったあと、平日の五時過ぎっていう場合が多いですね。
会社の最寄駅の喫茶店複数を使い分けてる。
クライアントはね、社内の人とか、社外では会社員や研修の仕事をしてる人。少ないです。 - 城田
- そういう人たちに会社が終わったあと、基本的には5時過ぎに、喫茶店で、コーチングをしているのね。
斎木さんはコーチングを始めたのはいつだっけ? - 斎木
- 3年前の2005年。PHPのビジネスコーチ養成講座。ベーシックコースの第1日目は7月末だった。
- 城田
- 懐かしいね。
- 斎木
- もう3年も経っちゃった・・・。
- 城田
- そうか・・・3年前にコーチングを始める前と、3年学習した今と、どんなことが変化した?
- 斎木
- う~ん、すごい劇的に変化した。ものすごく劇的に、いろんなことが。
自分も変わったし、周りも変わったし・・・自分が変わったので環境が変わったのかな。 - 城田
- なるほど。
- 斎木
- ていうのを劇的に体験した。
まず自分のことから言うと・・・コーチングを勉強する前は、あんまり自分のこと、大事にしてなかったなぁって。なおざりにしてたって言うか、ほったらかしにしてた、気がする。そのときはあんまり自覚していなかったんだけど、今振り返って考えるとね。 - 城田
- なるほど・・・おもしろいね。
- 斎木
- で、今は自分のことを大事にしてる、よね、前よりは。
自分にはリソースがあるっていうのを、「はい、ありますね」って、ちゃんと認めてるし、自分で。 - 城田
- 自分のリソースを自分で認めている・・・?
- 斎木
- 認めることができるようになった。
今までは、人からほめられても「いえ、いえ、いえ!」って。 - 城田
- いいリソースなのに。
- 斎木
- 勿体ないよね(笑い)。
- 城田
- 勿体ないね(笑い)。
- 斎木
- それが、「自分に自信がない」っていうことにつながっているよね、必然的に。うん。
でも今は自分にはこういうリソースがあるんだっていうのを、ちゃんと認めて、「はい、そうですね、ありますね」って言えるようになりましたね。 - 城田
- それって大きな変化だね。
- 斎木
- すごい大きい変化ですね。
あと、それに伴って自信と責任のようなものも。 - 城田
- あ~、そうか、セットなんだね。
- 斎木
- そう、セット、セット。
自分を自分で認めてあげないと自信も出ないし、それに伴って責任も生まれない。「このリソースを抱えた自分としてどういうふうに生きていくか」っていうふうな責任。なーんにもなかったら責任なしでいいじゃない。ぷーらぷらしてればいいんだから。
・・・ていうふうな変化が、自分の中であった。
それで、少し、落ち着けるようになった、精神的に。 - 城田
- 落ちつけるようになったっていうのは?
- 斎木
- つまり物事や問題に「ガ~!」って首突っ込んで、バタバタってしているんじゃなくて、少しこう離れて、メタの立ち場から・・・
(注:メタは「○○を超えて・・」という意味。ここでは俯瞰するといった意味) - 城田
- あ~、ちょっと客観的に、視点が?
- 斎木
- そう、客観的に、上のほうに行くようになった。
- 城田
- 「全体的な視野が見れる」って・・・そういうこと?
- 斎木
- 私は、以前から自分がバランスがとれていないっていうのがとても気になっていて・・・
バランスがとれないっていうことはやはり、その、すぐアソになってしまうわけよ。
(注:アソとは、アソシエーションの略。実体験と言う意味。ここでは生々しく自分の身に起こったことのように感じてしまうこと) - 城田
- あぁ・・・
- 斎木
- すぐもう、他人事でも「あぁ~~」って。
- 城田
- 首、突っ込んじゃうわけね。それで大変になっちゃう・・・
- 斎木
- 大変になっちゃうっていうのも、自分で気がついていて、「もうちょっと客観的に物事を見ないとね」って分かっていたんだけど、どうしていいか、やり方が分かんなかった。
- 城田
- で、コーチングをやって、そうやって客観的に、少し距離間を持って、見られるようになったっていうこと?
- 斎木
- と言うよりは、いつのまにか、そういうふうになっていた。
- 城田
- じゃあ、コーチングによってそういうふうにしようって思ったんじゃなくて・・・
- 斎木
- 違う、違う。
- 城田
- 自然に、コーチングを学習していて、気がついたら、あ・・・変わってるって?
- 斎木
- 前よりはね。
メタの立場に立つっていうのがコーチでは大事だよね。 - 城田
- あぁ、そっか、そっか、そうだよね。
クライアントと一緒に問題に頭突っ込まないよね。 - 斎木
- そうそう、そういうこと。
ということで、「コーチとしての自分」というのを考えた場合に、「メタである」というのが私にとって大事なキーワードとなって、物事がバランスよく冷静に見られるようになった、っていうおまけがついた気がします。 - 城田
- へ~・・・素晴らしい。
それはすごい変化だね。 - 斎木
- そうなの。
でもそれは1人じゃできなかった。学ぶ友達、仲間、先輩、後輩がまわりにいっぱい・・・まあ味方がいっぱいいるというか。 - 城田
- あぁ、いいね。味方がいっぱいいるって。
- 斎木
- そう、しかもみんな対等なのね。
上から目線で「先輩だから俺が指導してやる」っていうんじゃなく、つまり、弟子・師じゃなくて、「みんな対等で、学んでいく仲間だよ」っていう関係が、この世の中にあるというのを発見したわけね。 - 城田
- ふうん・・・
- 斎木
- だから、学びというのはそれぐらい深くて果てしなくて「みんな、1人でカバンを持って、とととと・・・と行くんだね」っていう感じ。
- 城田
- ん? カバンを持って・・・?
- 斎木
- それはベーシックコース(注:PHPビジネスコーチ養成講座ベーシック)のときからの私の学びについてのイメージなのね。
学びの旅を自分のカバンを持って、自分の、その重いカバンを持って、1人で歩く。そういう人が何人か・・・ - 城田
- あ~、周りをみるとそういう人がいるわけね。
声をかけあったりして。 - 斎木
- そう、かけあうんだけど、でも自分の荷物は自分で持ってるわけだ。
- 城田
- あ~、なるほど。
おんぶしたり、ではなくて、自分で荷物を持って・・・ - 斎木
- そう、カバンの形とか色はちがうんだけど、で、いろんな山とか道とかあるんだけども、みんなあるものを目指して、行く仲間が何人かいるんだなぁって・・・そういう関係性が学びっていうものであるんだなって。
そういう世界があるんだっていうのが分かって面白かった。 - 城田
- 斎木さんはそういうふうに自分自身がすごい変わったわけじゃない? バランスもとれるようになったし。
- 斎木
- 前よりはね。まだまだだけど。
- 城田
- 周りはどんなふうに変わった?
- 斎木
- 周りというか、環境は変わったね。
まず一つは、学びの仲間がいる、という環境が私にとっては得られたわけね。そして声をかけてくださる方もね。自分が落ち着けるようになった。今まで自分の場所ってどこだろう、って思ってた部分があるわけね。それを自分で見つけたようなところがある。
今でもつらいことはあるんだけど、ときどき「よく病気にならなかったなあ」ってくらい。
でも周りからは淡々として見えるみたい - 城田
- 淡々としてるって?
- 斎木
- あんまり「わーわー」言わず。
- 城田
- 前は「わーわー」してたんだ。
- 斎木
- してたしてた。
- 城田
- だけど今はもう、「わーわー」言わなくなって、落ち着いた感じになったのかな。
- 斎木
- 実はまだまだだけど、私に対して「淡々としてるなあ」という印象を持っている人がいるみたいだって、周りの反応を見てるとそう思うときがある。
それは前と変わった点じゃないかな。 - 城田
- 周りも変わるんだね
今、コーチングを学んで3年くらい経って、いろんな変化が自分の中に起こって、周りにも起こって、実際にコーチングを実践してると思うんだけど、最近のコーチングの中で、コーチングが機能したなっていうことってある? - 斎木
- 機能か知らないけど、びっくりすることは毎回ある。
- 城田
- 特に印象的だったのは? 差支えない程度で。
- 斎木
- そうですね、あのね、セッションの間は別にまあ、淡々と終わるじゃないですか。それで次回、なんか変わってるの。
もうびっくりして(笑)。「え? え? えーっ?」って・・・ - 城田
- セッションが終わって、その次のコーチングのときに、現われたときに変わってるんだ・・・
- 斎木
- 顔とかも変わるときあるし。態度も「え? 何で急にやる気に?」みたいな(笑)。「何があったの?」って、も、びーっくりして・・・
前に尊敬する先輩に言われたんだけど、「クライアントが勝手に成長してくれるから、コーチングって楽よ」って。「うそ~!?」って思ってたんだけど、本当にそうで、びーっくりする。 - 城田
- へえぇ。
でもコーチングのセッションが終わってクライアントの行動が、あるいは態度とか気持ちが変わったっていうことだよね。 - 斎木
- コーチングがなんかの、ちっちゃい、プッシュみたいなのにはなってるかもしれないけど。
- 城田
- 刺激っていうか、きっかけみたいなね。
- 斎木
- でも、どうだか分かんない。
ただ毎回変わってるんで毎回驚いて、一番最初から比べると、ものすごい変わってるわけ。 - 城田
- それは嬉しいね。
- 斎木
- 嬉しいと同時に、素晴らしいと思うのね、人って。
- 城田
- こんなに変われるんだね。
- 斎木
- こんなに元気に、威勢よくなっちゃって(笑)。「なんでですか?」って聞くわけにもいかず、いや、ありがたいなぁ・・・って。
定期的なクライアントを初めて取ったとき、毎回「失敗した~、失敗した~」ってへこんでたのね。そうしたらある日突然クライアントが「セッション楽しい」って。すごい失敗してると思ったんで、まさかそんな反応来ると思わなかった。「毎回セッションが楽しみで」って言われたときに、ほんと、分かんないもんだと。
だから、1回のセッションのことであんまり悩む必要なし。コーチとして、セッションの進め方とか、工夫する必要はあるけど、それとクライアントの変化とは別のことだから。 - 城田
- そうね、投げたボールだからね。
- 斎木
- そう、投げたボールだから。
私は私で前進すればいいだけで。 - 城田
- まさにメタの立場だね、今のも。
- 斎木
- だから1回のセッションのことで失敗、成功って言えないって思った。
- 城田
- 自分では分からない。
- 斎木
- 分かんない、分かんない。
すごい失敗したって思ったのに、「あれがきっかけでちゃんと、なんとかなりました」みたいに言われこともあるじゃない? 「だって、セッション中はそんな感じじゃなかったじゃない?」って。 - 城田
- いい驚き。それは嬉しい驚きだね。
- 斎木
- このことはね、コーチングというものに対する信頼とクライアントに対する信頼というものを強くしてくれたんだと思う。
- 城田
- なるほど。いいなぁ、それ・・・(笑)
- 斎木
- な~に、言ってるの、先輩!
- 城田
- いくつも、毎回変化があるって言ってたけれど、
- 斎木
- ごめん、毎回なんて言っちゃった。
- 城田
- じゃ、複数・・・
- 斎木
- 複数ね。
- 城田
- その中で特に印象的なものをふたつでも、みっつでも教えてくれる?
その変化が起きたコーチングの中で、斎木さんが、意識してやっていることってある? あるいは思い返してみて「あれ、やったからだな」って言うのはある? - 斎木
- そうね・・・今思うとね、クライアントのあるがままの姿を見ようとしていたかな。
特に最初のころ。今は、「コーチングの時間は、クライアントが自分と会話する時間だから邪魔しないように」っていうのは気を付けてるんだけど。 - 城田
- 大事だよね。
- 斎木
- 「クライアントに気づきを与える」っていうのは、自分の力ではできない、私の力はまだそこまでいってないんで、とにかく「あるがままのクライアントを受け入れて全面的に味方になる」と。最初のころは、「それくらいしかできることないから」って。
- 城田
- 今のは「コーチのあり方」みたいな感じだよね。
そういったあり方みたいなものでもいいんだけど、斎木さんがコーチとして重要だと思っているものってなあに? - 斎木
- いっぱいあるよね
- 城田
- 特に、力をこめてこれを・・って言うのは?
- 斎木
- 「意図を持って言葉を発する」ことです。
コーチの言葉というのはすごい影響力があるから言葉にはとても気をつけなければいけない、と。これは田近先生(PHPの私たちのトレーナー)から教わったこと。「コーチは言葉に敏感であれ」って。前回(注:前回の「今日のコーチ」の対談)、山下さんも話されてたでしょ。ほんと、そのとおりだと強く思う。
できないんだけどね。なかなか。 - 城田
- 難しいよね。
意味のない発言みたいなものを落としていくべきだね。 - 斎木
- 削ぎ落したい。
相手からは自然に見えてるけど、コーチは意図をもって、戦略的な言葉と態度とを使っていきたいな、っていうのはありますね。 - 城田
- その意図をもってコーチングをするとね、どんないいことがあるの?
- 斎木
- お、メタ成果!
・・・どんないいことがあるんだろうね・・・。
そうやって言われるとよく分からないんだけど、その意図というのによるんじゃない? - 城田
- うん。
- 斎木
- そうね、まず一つは、セッションが変な方向にそれない。雑談っぽくならずに済む。
- 城田
- そうね。コーチングは雑談じゃないもんね。
- 斎木
- より、雑談ぽくならなくて済むっていうのがあると思いますね。それでもって次の戦略が出せるかな。
うーん、難しいなあ・・・
でも、クライアントの大事な時間を無駄に使わずにすむことにつながるかなあ。 - 城田
- なるほど、それもあるよね。
ところで、斎木さんがコーチングを通じて社会で実現したいことってどんなことがある? - 斎木
- やっぱり私自身の経験からも言えるけど、自分のリソースをちゃんと認める、認めて、そのリソースを開花させて自立している、そんな人が社会の中にたくさんいればいいなっていう気持ちかな・・・
- 城田
- すごい社会貢献だね。
- 斎木
- 人は自分のリソースをね、開花させる責任がある、っていう気がするのよ。
- 城田
- お~・・・
- 斎木
- なんか、勿体ない気がする。埋もれてるのが。リソースが埋もれたまま死んじゃうっていうのが。
もっているものをフルに発揮する。「スイッチ! 自分の手で!」って感じかな。「スイッチ、どこにあるの~」って探して、開花して自立する。
好きなことをして活き活きしている人を1人でも増やしたい。そういう人は自然と社会に対する目も開けてくるんじゃないかなぁって気もするんですけど。 - 城田
- そうだろうね。
自分でスイッチを押してね・・・ - 斎木
- 自責。
コーチングでそれに気づくことができるんじゃないかって思うんだけどね。 - 城田
- 副産物かもしれないけれど生まれるんじゃないかって。
- 斎木
- コーチングでは、常に「あなたはどうするの?」って聞くからね。それによって自責の人間になるってことは、道が開けるってことにつながる、と思いますね。
他人の言動に左右されない人。ぶれない人。そうしたら自分で道を探していける。そういう人を1人でも多く、コーチングで作れるんじゃないかって思う。 - 城田
- 作れるよね、きっと。
これまで斎木さんがどういうふうにコーチングに取り組んできたか、社会にどう働きかけていくかを、聞いてきたんだけれど、今度は、コーチングを受けてみたいと思っている人にメッセージを。 - 斎木
- 「どうぞお気軽に」ですね。
きっと自分のね、思いがけないいいところ、リソース・・・思いがけない自分の中の宝物をいっぱい発見できると思う。 - 城田
- ああ、そうだね。いいね。
- 斎木
- 言えてるでしょ?
「宝物があるっていうのを知らないかもしれないけど、それがコーチングで発見できますよ」って。確実に。 - 城田
- じゃあコーチングをこれから勉強したいって思っている人にはどんなメッセージを?
- 斎木
- まあ、「やってみれば」って感じなんですが。
「深めるのも、浅くするのも、あなた次第ですよ」って言いたい。 - 城田
- あ~・・・、大変意義のあるお言葉。
そうだねぇ・・・ - 斎木
- 「それぐらいすごく深いものだよ」って。「底知れないくらい深いものですよ」っていうのを言いたい。
- 城田
- 斎木さんはすごく深まった感じがある?
- 斎木
- いや~、
ただ「深いな~」っていうのは知った気がする。 - 城田
- コーチング勉強して、すぐ「はい、分かった! はい、学習終わり」っていう人もいるもんね。
- 斎木
- そうそう、いる~。
- 城田
- あれは単に入口だったにすぎないのよね。
それも選択肢の一つでもあるかもしれないけどね。 - 斎木
- だから深くするのも浅くするのもその人の用途と希望と好みで変わってくるだろうから。それに応じて伸び縮みするもの、じゃないかな。それだけのものを手に入れられるのよ。浅くしたたら、浅くした分だけ、深くしたら深くした分だけきっと、手に入れられるものがあるんじゃないかなって思うんだよね。
- 城田
- いい言葉だね。
さて、以上で、質問は大体終わりなんですが、他に斎木さんが言い足りなかったこととか、何か付け加えることはあります? - 斎木
- あ、私、いま吉田松陰がすごい気に入っちゃって。
- 城田
- 吉田松陰、気に入ってくれた? いいでしょ?いいでしょ?
(注:司馬遼太郎著『世に棲む日々』は幕末の長州藩の吉田松陰と高杉晋作を描いた時代小説。インタビューの数日前、城田が読んで感動し、斎木さんに話したところ、彼女も読んで感動した、ということがあった) - 斎木
- 司馬遼太郎が、吉田松陰の学びということについて書いてるエッセイがあったの。
松陰は分かりにくい。書き残しているものも、ほとんど当時の時局問題に関することなので、現在の私たちにはつかみづらい。
でもなぜ、あれだけ松陰は人に影響を与えたのか、人が人に影響を与えるとは、どういうことなのか、というのが『世に棲む日々』のテーマだったんだって。で、いろいろな時代的な要素と松陰の知的レベルの高さというものもあったろうが、それよりも松陰自身の人柄がすばらしくて、接した人は影響を受けずにはいられない、ということ。
その基本となったのが、松陰が小さい頃から言われていた、私と公の区別、「お前は公のことを考えなさい」と言われて育ったこと、そしてその他にどの人に対しても親切で、明るくて、やさしいという性格。これがすごく大きかったのではないか、と。
それと、知的好奇心が大きかったこと、観察力が鋭かったこと、柔軟なものの考え方ができる、っていう三つ。
そして、その他に大事なことが、松陰はいろんなことを学んだあとで、自分の中でそれを受け入れて育むことができたと。右から左へ流すのではなく、自分のの中で熟成させた、と。 - 城田
- 確かに熟成感があるよね、吉田松陰って。
育む力って、すごく大事なことだね・・・ - 斎木
- そうそう、その文章に線引いちゃったもん、私。
あと、松陰は自分はいかに生きるべきか、そういう人生の意味というものをものすごく真剣に考えいた。これらが混じって、玲瓏な玉のような人柄を作ったんではないかって。 - 城田
- それがあんなに優れた人たちを生み出した。
- 斎木
- 松陰は人をひきつける磁石のようになっていた。だから実際に接した人はその影響力をみんな浴びたんじゃないかって。
- 城田
- すごい人だね。
- 斎木
- そう言うのを見てなるほど~って思って。
育むって大切。 - 城田
- 育みたいよね、私たちも。
さて、そろそろお時間ですが。何か言い足りないこととかはあります? - 斎木
- いや、とても楽しく、お話させていただきました。
- 城田
- 私も楽しかった。
どうもありがとうございました。